研究活動

研究室探報

准教授堀江 優子Yuko Horie

堀江 優子

Q1 先生の専門分野について教えてください。

私の専門は、財務会計論と簿記論です。財務会計の概念フレームワークにおける根本的思考である「資産負債アプローチ」について、その理論を精緻化するための会計理論研究を行っています。また、簿記教育についても研究しています。

Q2 具体的にどんな研究をされていますか。

例えば、会計アプローチが収益費用アプローチから資産負債アプローチへと移行することで、簿記はどのような影響を受けるかについて研究しました。

財務会計の概念フレームワークは、首尾一貫した会計基準を導き出すために、財務報告の基本目的および基本原理を整合的に規定した体系であり、いわば会計基準設定のための理論的拠り所ということができます。そして会計アプローチは、財務会計の概念フレームワークを支える、最も根本的な概念です。従来の会計は、収益費用アプローチを採っていましたが、今日では資産負債アプローチを採るようになりました。

この財務会計の概念フレームワークにおける会計アプローチの変化が、簿記にはどのような影響を与えるのかという点について、具体的に収益認識の会計処理を題材に検討しました。

そして、資産負債アプローチは公正価値と結び付けて理解されることが多いのですが、それは誤解であるということを主張しました。IASBとFASBの収益認識プロジェクトでの議論の過程で、公正価値モデルをやめて契約上の資産負債に焦点をあてた顧客対価モデルに変更がなされました。そのため、資産負債アプローチの考え方に沿っていないと指摘されることもありますが、資産負債アプローチへの誤解が解ければ、顧客対価モデルはまさに資産負債アプローチの考え方から導かれるものだと理解できます。

現在、会計基準を国際的に統合しようという流れは一層加速しています。しかし、わが国の概念フレームワークは依然として未完成です。概念フレームワークが、より良い財務会計・報告基準に向け多大な貢献をなし続けるためには、その基礎となる会計アプローチも統一的な理解が持たれるべきであると考えられます。そのため、改めて「資産負債アプローチ」の概念について検討し、資産負債アプローチに対する誤解を解消することは、非常に意義があると考えています。

Q3 私たちが財務会計や簿記について学ぶことで得られるものは何ですか。

簿記や財務諸表についての知識をもつことで、数字という言語を通じて会社の全体像を理解し、今後について考察することができます。また、勘定科目間の関連性を理解することで会社の大きな動きを理解することができます。

例えば営業担当者であれば、自分が販売している製品1個当たりの原価を知ることにより、値引き販売やボリュームディスカウントの是非を検討できるようになるでしょう。キャッシュフローの概念と重要性を知れば、受注契約後の回収までしっかり意識するでしょう。損益分岐点を理解していれば、売上目標達成へのコミット度合いも違ってくるでしょう。

簿記や財務会計の知識の習得はきっかけに過ぎません。それ以上に重要なのは数字をベースにした思考力です。これは、社会人基礎力として身に着けておくべきものだと思います。