研究活動

研究室探報

准教授盛本 圭一Keiichi Morimoto

盛本 圭一

Q1 先生の専門分野について教えてください。

私の専門は財政・金融政策の理論分析です。政府は税や借入れで調達した資金を使ってサービスを提供したりインフラ整備をしたり、世の中に出回るお金の量を調節して経済活動を支えていますが、その方法についてモデルを使って研究します。

Q2 具体的にどんな研究をされていますか。

例えば、欧州で採用されている政府の債務(=借入れ)削減ルールについて研究しました。近年の欧州では政府債務の累積が引き金となって危機が起きたため、EU加盟国の政府は共通の債務削減ルールを守るよう求められています。そのルールとは、「政府債務がGDP(=経済全体の所得総額)の60%を超えると、60%になるまで一定の割合で債務削減する」というものです。この特別なルールで政府活動が制約されると経済動向に何らかの影響がありそうですが、それをモデルで調べてみました。

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その際、ある事実に注目しました。図を見てください(IMFウェブサイトのデータから作成)。政府債務累積で苦しむ欧州の国と日本について、政府債務/GDPの比率の動向を示したものです。実はこれら欧州の国は対外債務がとても多いのですが、日本はそれが少ないことが知られています。そして、現実に危機が生じたのは欧州です。よって、一口に債務といっても対外債務が重要である可能性があるので、そこを捉えるモデルを構築しました。

主な結果は、「政府債務の長期目標値(現行は60%)を十分低くしなければ、経済が不安定化する」というものです。さらに、「危機が起きるような不安定な国のデータに基づいて十分低いといえる基準値をモデルから計算したところ、60%という長期目標値は高すぎる」ことも分かりました。つまり、ルールが不安定化の原因かもしれないということです。

理論モデルは現実の一部を切り取ったものにすぎないのですが、こうして現実に採用されている政策について表面的な印象を超えた深い洞察を得られることがあります。だから理論研究は面白い、私はそう思っています。

Q3 私たちが財政・金融政策について学ぶことで得られるものは何ですか。

財政政策や金融政策なんて天下・国家の話だから自分には関係ない、そう思う人もいるかもしれません。しかし、実際には私たちの生活に密接に関係しています。

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例えば、図に示したのは代表的な住宅ローン、日本住宅支援機構が提供する「フラット35」の金利の推移です(日本住宅支援機構のウェブサイトよりデータ取得)。この金利は国債の金利と連動して決まるのですが、国債の金利は財政の見通しを反映した国債市場の動向や日本銀行の金融政策に影響されます。図にあるような数%の違いは微々たるものに見えるかもしれません。しかし、例えば35年固定金利で5,000万円を借りるとき、金利が3%から1.5%に低くなるなら、返済総額は約1,650万円も少なくなります。財政・金融政策の動向を知り、それを理論的に理解できることは、家計にとっても重要なことなのです。